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展覧会に寄せて
小樽・札幌での展覧会に寄せて−平沢武彦
平沢貞通「逮捕後63年目の郷里での雪冤」
帝銀事件再審請求人・平沢武彦

風景 1909年
市立小樽美術館で展示中

 

第二回帝展入選作「春近し」
北海道立近代美術館で展示中

 

 国家が奪った、画家・平沢貞通の存在。その画家としての再評価と復権を求める活動を20年近く行ってきた。画家として、半世紀近く葬られた画業と絵に光をあてようと。
平沢は生前「家宅捜索で押収された絵、代表作をおさめたアルバムを弁護士先生に頼んで、還付していただけませんか」という思いを面会の際に、涙ながらに話していた。
 事件とは無関係の絵やアルバムをも拘禁されていたのである。それらの絵とアルバムは、平沢の死後10年たって私のもとに戻された。
 私が、絵探しの旅をしながら、平沢貞通の画家としての再評価を求める活動は、郷里の北海道の古美術商をたよりに巡り探し始めた。それは雲をつかむようなものだった。
 絵を持っていた人たちの多くは、帝銀事件死刑囚との名に、壁に飾っていた絵をはずし、倉庫の中にしまったり、骨董商に売ったり、転々とした。平沢貞通自身と同じく、逮捕前の絵は、闇に葬られてきた。
 その後、作品の所在は少しずつ集まり、百十数点を数えるほどになった。しかし、展覧会に出品された3百余の代表作に限っては、十数点しか見つかっていない。
 なかには、雅号が削り取られていたり、謹呈者の名が墨で塗りつぶされてあったり、額の裏に「帝銀問題の人」と記されていた絵も数々あった。
 しかし、市立小樽美術館や北海道近代美術館の若い学芸員が、帝銀事件とは関係なく、一人の画家として研究をし、北海道美術の先駈けの代表的な画家として見られ始められている。
 その具体的な表れとしては、市立小樽美術館で、2010年2月27日から5月9日まで「小樽水彩画の潮流 平沢貞通・埋もれた画業の発掘」との展覧会が開催され、平沢の作品を34点展示、そして北海道立近代美術館では、2月20日から4月11日まで、常設展で、第2回帝展入選作「春近し」が展示される。
 平沢の郷里の北海道では、画家としての復権が、ようやく雪冤されようとしている。
まさか、平沢もこのように、郷里で画家としての復権がなされようとは思っていなかっただろう。
 私は、長年、コツコツと「絵探しの旅」をおこない、全国各地で「空白の画展」を開いてきたが、そのような試みが現実に実ることもあるのだということを、しみじみと思う。
逮捕から63年後の郷里での雪冤である。
「赤松と海」1922年
市立小樽美術館で展示中

 

「竹林」1925年
市立小樽美術館で展示中

 


小樽・水彩画の潮流
平沢貞通・埋もれた画業の発掘
会期: 2010年2月27日(土)〜5月9日(日)
場所: 市立小樽美術館
北海道小樽市色内1丁目9番6号
0134-34-0035
開館時間: 9:30〜17:00(最終入館16:30)
休館日: 月曜日(3/22・5/3を除く)、3/23(火)・3/24(水)
観覧料: 一般300(240)円、高校生/市内高齢者150(120)円
中学生以下無料  ※( )内は20名以上の団体料金
主催: 市立小樽美術館
協賛: 市立小樽美術館協力会

第二回帝展入選作「春近し」展示
北海道立近代美術館 常設展 これくしょんぎゃらりー
「今田敬一の眼 ―北の風土と美術」の中で展示
会期: 2010年2月20日(土)〜4月11日(日)
場所: 北海道立近代美術館
北海道札幌市中央区北一条西17丁目
011-644-6881
開館時間: 9:30〜17:00(最終入館16:30)
休館日: 月曜休館 但し3月22日(月)開館、23日(火)休館
観覧料: 一般500(410)円、高大生250(170)円
65歳以上、心身に障がいのある方、中学生以下などは無料
※( )内は10名以上の団体料金

平沢貞通氏を救う会
e-mail :
teigin-case@gasho.net