環境問題ページへ戻る


  当初から疑問の声があがっていた千歳川放水路計画は、今年(1997年)に入ってから、計画を推進してきた自民党内からも財政事情悪化を理由に見直し論が出始めました。このページでは「千歳川放水路に反対する市民の会」事務局・大西陽一氏から寄せられた、千歳川放水路計画の概要とこれまでの経緯を紹介しています。続編(最近の動き)も近々掲載予定です。


千歳川放水路計画 1

文:「千歳川放水路に反対する市民の会」

事務局・大西 陽一

掲載日:1997年5月29日

はじめに

 石狩川は、大雪山国立公園の石狩岳から上川盆地と石狩平野を南へ流下し、札幌を経て日本海へ流入する全長365km、流域面積14,330平方kmと北海道総面積の約6分の1を占める日本で2番目(現在は3番目)の大河川です。石狩川は、アイヌ語の「イ・シカラ・ベツ」(曲がりくねった川・湿地)に由来しているように、氾濫の度に河道を変える原始河川であり、多くの三日月湖が点在していた。
 千歳川は、この石狩川の下流部で合流する一支流で、支笏洞爺国立公園の支笏湖から合流点の江別市まで約108km、1,244平方kmの流域面積を持つ1級河川である。
 未開の原野であった北海道に開拓のクワが入ったのは1869(明治2年)のことで、それ以来、開拓者は次々と石狩川流域に入植したが、北海道開拓の歴史は石狩川流域の洪水との戦いの歴史といっても過言ではない。
 1898(明治31)年、1904(明治37)年の2度の大洪水をきっかけに、1910(明治43)年これらの洪水実績をもとに、石狩川の組織的河川改修工事が開始された。
 多額の国費を注ぎ込んで行われたこの治水工事は、無数の蛇行を強引に直線化するとともに強固な堤防を築いて河道を固定し、洪水を速やかに日本海へと流下させるものだった。その結果、勝手の長大な河川は今や268kmの長さに短縮され、特に中流部の深川市から河口部までの河道は58.6%にも及んだ。(写真:石狩川に合流する千歳川-手前)

 戦後の改修事業は、食糧増産と電源開発を優先させる国家的事業と位置付けられ中流域の自然の遊水池ともいえる三日月湖等は水田化されてしまった。さらに、流域の土地利用も大きく変化し、山林の伐採、原野の開墾が行われ、また周辺地域の人口増に伴い都市地域が拡大し自然の保水能力を低下させ降雨時の流出量を増大させることになり、皮肉にも洪水の危険性の増大と被害の増大をもたらす結果になった。
 特に千歳川については、中流部に標高6〜7メートルの窪みのような低平地が広がり、ここに千歳川の支川が集中して合流していることと、河道勾配が7,000分の1と緩やかなため石狩川の高水位の影響を強く受けるなどの地形的な特性、また、広範囲に火山灰層が分布しているため堤防等の基盤が弱く漏水危険性が高いことなどの弱点がありながら、これまで十分な対策がとられてこなかった。また、昭和20年前半までは長都沼などの低湿地で自然遊水池があったが、干拓したのも洪水被害をいっそう大きくする原因ともなっている。また、もともと水田として開拓されてきた低湿地に、札幌の通勤圏でもあるため宅地化あるいは工業団地造成も拍車をかける結果となっている。また、残った農地も国の減反政策により保水力の強い水田から、浸水に弱い畑作に切り替えたところが多く被害の増大をまねく結果となった。

 

千歳川放水路計画

 1981(昭和56)年8月、台風12号と前線の影響で北海道全域が大雨に見舞われた。雨は3日間降り続き石狩川流域で平均雨量282ミリメートル千歳川流域で340ミリメートルとなり、石狩川、千歳川の計画高水位を大きく超え大洪水となった。
 千歳川流域の被害は浸水家屋2,683戸、被害金額222億3千万円と未曾有の大災害となった。
 しかし、千歳川に限れば、洪水の原因は、一般的に考えられるような堤防の決壊によるものよりも、川の水位が高くなり周辺の水が川に流れ込めなくなる内水氾濫が主な原因であった、千歳川と夕張川に挟まれた南幌町では川の水位が高くなり堤防決壊のおそれがあったため、ポンプによる内水排除を自主的に停止し、内水による被害を受けている。千歳川流域にはこのような排水機場が40カ所以上ある。
 この洪水を重くみた北海道開発庁は、翌1982(昭和57)年1965(昭和41)年に決定された旧計画を全面的に見直し、150年に1度起こる(150年確率)洪水を想定、毎秒18,000トンの水が札幌の上流、江別の基準点で石狩川を流下するものとし、本流で毎秒14,000トン、ダムで毎秒2,000トン、遊水地で毎秒1,000トンを石狩川流域で処理して、同流域で処理しきれない(?)毎秒1,000トンを千歳川放水路を掘削し太平洋側に放流する「千歳川放水路計画」が登場した。

千歳川放水路の仕組みと概要

 洪水時には千歳川と石狩川の合流点で堰き止め、約30数キロにわたって千歳川の河道勾配をW0Wにして逆流させ千歳川の中流上部から放水路を通して排水するものです。このため新たに幅400メートル長さ40キロ、千歳川から太平洋まで長大な排水路?を掘削するというものです。これによって、石狩川及び洪水常襲地帯である千歳川流域の安全が図るというものです。

 下図のように平常時は、千歳川は石狩川に合流して日本海に流下している。したがって千歳川の水は一滴も放水路内には入ってこない、千歳川の水利権保持のためである、洪水時には放水路は様相を一変させる。

 

千歳川放水路計画のその後の動き

 1992年を迎えて「千歳川放水路計画」は新たな進展をむかえることとなる。
 2月12日、苫小牧市は石狩開発建設部に対して千歳川放水路計画の疑問点などに関する調査・協議継続の要望書を提出、内容の一部に建設を前提としたとも受け取られる提言があることから関係者に波紋が広がった。
 2月13〜14日、連合北海道等による「千歳川放水路問題検討委員会」による千歳川放水路の代替治水案の公開検討会が開催され、その中で北海道開発局は放水路の事業費の積算根拠を求める質問には詳しい内訳を示さず、提言された背割堤には「千歳川と石狩川の合流点では水位を下げる効果を認めつつも、総合的な治水対策は千歳川放水路しかない」との見解を示した。
 連合北海道による「検討委員会」はその後も「専門小委員会」に引き継がれていくが、開発局による情報の非公開性が結果として放水路計画に対する疑問をぬぐい去ることなく、下記の「要請書」、「知事意見」に反映されていく。
 3月19日、社会党北海道本部の「千歳川放水路対策会議」で放水路事業着工に必要な手続きである環境アセスメント(環境影響評価)の着手について、北海道開発局は「一部の自治体でも反対があれば着手しない。見切り発車は行わない」ことを明言した。
 4月7日、北海道の「美々川流域自然環境調査」は、辻井逹一北大教授を座長とする専門家による検討委員会に依頼して行われたが、検討委員会は美々川流域の自然環境について「自然本来の姿を残す数少ない地域の一つであり、高い評価が与えられる」との報告を知事に提出した。この報告書について北海道開発局の柳川建設部長は「放水路の計画ルートは、美々川流域の自然環境も十分念頭において検討した、最善のルートと考えており、変更の余地はない」との見解を示した。
 特に検討委員会報告で注目すべきは、美々川流域は「さまざまな自然がセットになって残り、それは複雑な連関の上に成り立つ水系の動向に依存している」として、流域の一部でも手をつけると全体のバランスが崩れかねないことを指摘しており、「放水路計画と環境保全との接点を見つけるのは難しい」(辻井座長談話)ことを浮き彫りにした。

 5月15日、21日、22日に行われた千歳川放水路計画に関する「知事ヒアリング」は、3日間で8市町、6団体の関係者から意見を聴取した。5月19日には、北海道開発局が美々川源流部を守るため、大規模な遮水壁と地下トンネルを使う新たな保全策を検討し、北海道に内容を提示していたことが明らかになったが、これは「美々川自然環境調査報告書」で流域の自然環境が高く評価されたことを受けて、これまで「計画修正の余地はない」との態度を変更し、計画の着工の糸口を探るものとみられる。
 だが、この新たな提案とは結局、今までの保全策では美々川を守りきることができないということを認めたものであり、従来から開発局が「自然にたいしても十分配慮した計画である」という計画そのものが問われることになり、地下水のコントロールができるかという疑問を深めることとなった。

 5月25日、北海道は開発局に対して、事務レベルでの問題点整理の中で「建設反対派や自然保護団体を納得させる条件」として

@治水対策の再検証。
A美々川源流部、ウトナイ湖の自然保護策の明示。
B農業、漁業などへの被害防止策

  などについて回答を求めていることが新聞報道された。
  5月26日、北海道開発局は、千歳川放水路計画で美々川源流部を迂回する新ルートについて検討を開始。
  5月28日、連合北海道は千歳川放水路計画に対する最終見解案として、千歳川放水路計画容認の条件として

@現ルートを東側に2km移動させ遠浅川まで迂回させる。
A放水路完成までの治水対策として千歳川流域の遊水池の設置。
B農漁業への影響調査と補償措置の明確化。
C地盤沈下の長期的観測体制。
D放水路周辺地域の振興計画の策定などを表明した。(6月3日、最終見解を正式決定)

 連合の渡辺放水路問題検討委員会委員長は「見解は容認ではない。放水路は有効であるとの判断である。条件が満たされた場合、容認に発展する。しかし条件が達成できなければ計画の白紙撤回を求める」と述べた。
 戸部北海道開発局長は連合の見解に対し、「放水路が有効であるものと判断されたことは意義がある。現状においてルートは最善のものであり、今のところ変更は白紙である」「ルートを修正すれば新たにさまざまな問題が生じることは必至だ」と、ルート変更には消極的な姿勢を示した。
 北海道漁業団体公害対策本部は緊急対策会議を開き、「漁業影響、防止対策が示されておらず千歳川放水路計画には反対」であることを決議。
 6月8日、オーストラレイシア渉禽(しょうきん)類研究グループ(オセアニア地域の鳥類学者などで構成)が北海道知事に対して「美々川やウトナイ湖の保全を求め、放水路建設について熟慮を求める」要請文を郵送。
 千歳環境問題連絡会が「現段階では容認しない」ように知事に要望書提出。
 6月9日、社会党北海道本部の千歳川放水路対策会議は、計画に対して「治水対策としての放水路の有効性については認識するが、

@石狩川本流、千歳川の治水対策の強化。
A自然環境や景観保全のためルート変更。
B農漁業への影響対策と振興策の具体的提示。
C気象的変化、社会的影響、生活環境の変化に対する諸対策の明確化。
D掘削した土砂の処理計画の明確化。
E放水路流路内の環境対策の具体化を解決し、関係自治体、団体、住民の理解と協力を得ない限り、計画の推進を容認できない」との見解を発表。


 6月10日、北海道知事が北海道開発局に対し「意見書」を提出。内容は

@放水路のルートを変更し、美々川流域を迂回させる。
A当面の洪水対策として、遊水池の設置や内水排水施設を整備する。
B気温の変化や霧の発生の恐れがあるので、農作物の生育に関する調査を実施する。
C漁業影響評価を行い、影響を最小限にする措置を明確にする。
D苫東基地開発計画との調整について協議するとなっている。

 このことは、北海道が千歳川放水路計画に対し「ルート変更」で事実上の政治的決着を図ったものであり、これにより新たな段階を迎えたと言える。
 だが、千歳川放水路建設に伴うさまざまな影響に対する解決策の輪郭はなお不明確なままである。

 8月22日、日本野鳥の会が東京で国際的な「千歳川放水路問題シンポジウム」を開催。計画の白紙撤回を求め全国的運動を提起。(写真:東京で行われたシンポジウム)

 8月24日、胆振・日高地区千歳川放水路対策協議会(胆振・日高管内21漁協で構成)が発足、反対運動を強化し、計画の白紙撤回を確認。

千歳川放水路計画の問題点

 放水路のルート変更によって政治的な決着が図られているとはいえ、全ての問題が解決され、関係者が容認し事業が着工されるまでには、まだ紆余曲折が予想される。
 問題解決の最大のポイントとされる「ルート変更」に限ってみても、東側に2km移動させた場合、美々川源流部は通過することは避けられても、馬追丘陵に端を発している地下水脈は分断され、放水路に流れ込む。源流部の乾燥化を防ぐためには遮水壁や地下トンネル建設といった対策が必要であるとされていたが、この対策の有効性が疑問であったのに「ルート変更」によって対策はむしろ困難さを増すことになる。さらに、気温の変化や霧の発生による農作物の影響は解決されず、漁業被害は放水路が建設される限り避けられないのである。
 つまり、ルートが変更されても従来から指摘されている問題が解決されることはないのである。

原則的な治水対策を

 「同一水系での治水対策」が治水対策の原則であるのは、自然の大規模な改変の影響は予測がつかないということとともに、水による被害を回避するための代償は、水によって利益を受けている地域が支払うべきだということからきている。
 利益は自分に、被害は他人にでは、根本的な治水対策などできるはずがない。
 千歳川の治水対策にしても、国や流域の市町村が今までどのような治水対策を行ってきたかが問題である。洪水を増大させる山林の荒廃、ゴルフ場等の乱開発、水田の減反等に対しては、むしろ容認し、協力し、あるいは積極的に推進さえしてきたのではないか。そして今「千歳川放水路計画」によって、本来的に行われなければならない石狩川水系の洪水対策がなおざりにされているのではないのか。 

18,000t/sの基本高水流量の疑問点

 千歳川放水路計画は世界的にも類を見ない大規模な地形改変を伴う治水計画であるが、その計画論拠自体に大きな問題点がある。
 千歳川放水路計画は石狩川治水計画の基本高水流量18,000t/sを前提にして、これを処理することを目的として立案されているものである。
 この基本高水流量18,000t/sは、石狩大橋地点を基準地点として、150年に1度発生するような降雨規模(3日雨量 260mm)を基準地点上流に降らせてみて、どのような洪水が発生するかを貯留関数法という複雑な流出解析法でコンピュータを使用して算出したものである。
 この降雨規模(3日雨量 260mm)は、大洪水となった昭和56年8月降雨の282mmと比べても大きくはない。だが、8月22日に行われた日本野鳥の会主催の「千歳川放水路問題シンポジウム」で、新潟大学河川工学の大熊教授の報告によると、計画の降雨規模(3日雨量 260mm)の降雨パターンに問題があるとされた。以下要約すると、雨の降り方は 260mmが3日間に均等に降る場合もあるし、3日のうち1日に集中する場合も考えられる。また地域的に集中、分散する場合もあるので、流出解析をするにあたっては、この降雨パターンを時間的・空間的に決めてやらねばならず、そこが最もむずかしいところであり、石狩川治水計画の場合は、その決め方を過去のいくつかの洪水における実績降雨パターンを基準として、総量が 260mmになるように引き伸ばして(引き伸ばし率は2倍以下の制限あり)決定されている。
 そして昭和50年8月の降雨パターンで降らせた場合、流出の最大高水流量が18,000t/sに達したので、これを石狩川治水計画の基本高水に採用したということになっている。
 ちなみに昭和56年8月の降雨は総量で 282mmあったが、この実績降雨の流出解析の最大洪水流量は14,400t/sであった。なお、昭和56年8月洪水の実績最大高水流量は11,330m3/sであり、仮に堤防からあふれた洪水を戻して計算しても12,080m3/sにしかならないとのことである。
 昭和50年8月(実績降雨量 173mm)と昭和56年8月の時間的降雨パターンは、昭和56年降雨は56時間降り続いたが、昭和50年降雨はほぼ36時間で降り終わっている。
 つまり、56時間継続で 282mm降らせれば14,400t/sであるが、36時間で 260mm降らせれば18,000t/sとなることである。3日間雨量 260mmとしているが、計算上では36時間すなわち 1.5日に 260mmを集中させることになっている。
 総雨量が少なければ降雨継続時間は短く、総雨量が多くなれば降雨継続時間も長くなるはずで、降雨総量と降雨継続時間との間にはなんらかの法則性があるはずなのに、この解析では、実績36時間・ 173mmというパターンを、単に時間分布と地域分布をそのままにして、総雨量だけを 260mmに引き伸ばして流出計算したにすぎないものである。
 この解析結果が「千歳川放水路計画」の根拠であるならば、260mmという雨量が36時間で降る可能性について科学的に明らかにする必要があるのではないかという疑問が提起されたのである。                                                                                   

「千歳川放水路計画」の白紙撤回を求めて

 我々は当初から「はじめに千歳川放水路ありき」ではないかとの疑問を提起してきた。千歳川放水路計画の問題点に対しての北海道開発局の対応もその場しのぎ的な回答であり、疑念は強まるばかりである。
 石狩川治水計画の基本高水流量18,000t/sを根拠に、千歳川放水路計画が作成されているが、その根拠に河川工学の専門家が疑問を投げかけていることは注目されることである。
 石狩川工事実施基本計画では18,000t/sのうち、14,000t/sを石狩川本流で、残りの4,000t/sのうち2,000t/sはダム、1,000t/sは遊水地で分担し1,000t/sを千歳川放水路により太平洋へ捨てるというものである。
 石狩川本流を14,000t/s受け持てるように改修するならば、昭和56年の大洪水時でさえ11,330t/sなのだから、本当に千歳川放水路は必要なのだろうか。  また千歳川放水路の建設には20年以上の歳月と 3,000億円を超えるといわれる費用(大阪市立大学地盤工学の高田教授によれば、用地買収費を除いて 3,135億円という推計があるとされている。)がかかるが、建設が着工されれば石狩川本流の改修費用に影響を与えないのであろうか。
 さらに、36時間で 260mmという集中豪雨では、最も重要視されている千歳川流域の内水氾濫による被害は無くならないのではないか。何のための放水路なのか。
 北海道の貴重な美々川流域の自然を破壊し、地域を分断し、農・漁民に多大の損害を与えることが危惧されており、世界的に「地球環境」が論議されている中で、このような自然摂理を無視した「千歳川放水路計画」に断固反対し「白紙撤回」まで闘争を継続させることこそ重要である。

 この計画により放水路ルート上の酪農地が分断され、漁業については洪水時に汚濁水が流出することにより壊滅的な被害が予想されています(2、3年毎に起きる小規模な洪水にも放水路内の水質保全のため放水)。また、地下水脈を分断することにより、ラムサール条約登録湿地であるウトナイ湖及びその主要な水源である美々川を乾燥化させるものです。
 そもそもこの計画については、様々な批判がなされています。まず、18,000トンという水量自体が、放水路をつくるために恣意的に高めに設定された疑いがあります。また、開発局が示しているウトナイ・美々川保全策は、地下水をポンプで汲み上げ湿原付近の地下水脈に注水するというもので、健康な人体に信頼性の無い人工臓器を埋め込むようなものにすぎません。
 これに対し私たち反対グループは、放水路によらない治水策を提言しています。

 

@極端に蛇行した石狩川河口をショートカットし、石狩川の低水敷を拡幅することによって石狩川本流の水位を下げること。
A遊水地を増設し、洪水時のピークカットをはかること。
B石狩川との合流部に背割堤を築造し、石狩川に流れ込みやすくすること等、実際に建設省が提唱している総合治水対策ともいえるものです。

  この代替案(複合案)に対し、北海道開発庁は何ら真剣な検討をおこなわず、放水路計画に固執し続けております。

 

 1995年に入って開発庁は、知事にたいする回答ともいえる、調査報告書を公表したが自然環境や、漁業対策については具体的な打開策は打ち出せず

 1995年当面の治水対策

 1996年河川法の見直し

 建設省は、長良川河口堰問題以降、「大規模公共工事見直し機構」の設置を検討しており、放水路については都市計画法の「都市計画決定」の中で計画を審議し決定していこうとしています。しかし、開発庁においては、まだ具体的な検討はなされていないようで、過日開催された北海道弁護士連合会主催のシンポジウムにおいても具体的な手順を説明することができませんでした。「もし都市計画審議会で否定された場合には計画をあきらめるのか」という質問についても回答することができませんでした。
 現状の都市計画は、国・道の主導によるところが大きく、また河川の専門家が審議会に入るケースは少なく放水路が真に必要とされるのか、審議することができるのか疑問があります。むしろ審議会の決定を盾に計画を強行される心配があるといえます。私たちはむしろ事業者主体ではない、厳密なアセスメントの制度化が必要であると考えます。

 

その後の動きについては次回までに整理します。(1997年1月以降分)

 

参考文献

パネルディスカッション「徹底検証!千歳川放水路」記録集 1〜3 (1992〜1995)千歳川放水路に反対する市民の会

北海道弁護士連合会 シンポ記録集

千歳川放水路問題検討委員会議事録 1992 連合北海道

千歳川放水路問題に関する検討結果報告書 1992 連合北海道

千歳川放水路に関する技術報告書 2冊 1993 北海道開発局

 

 


このページの文章は「千歳川放水路に反対する市民の会」事務局・大西陽一氏のご厚意により掲載したもので著作権は大西陽一氏が保有します。

著作者に無断の転載は禁止します。


 


環境問題ページへ戻る