千歳川流域地治水対策検討委員会への意見書 3

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bibigawa_02.jpg千歳川流域地治水対策検討委員会への意見書

この意見書は1999年3月10日付で「千歳川放水路に反対する市民の会」名で千歳川流域地治水対策検討委員会に提出された意見書です。「千歳川放水路に反対する市民の会」代表・大西陽一氏のご厚意により提供されたもので原文のまま掲載しました。(加藤)


1999年3月10日

千歳川流域対策検討委員会
委員長 山田 家正  様

千歳川放水路に反対する市民の会
代表  大西 陽一

中間報告に対する意見書

 貴検討委員会のこれまでの取り組みに敬意を表します。
私たちの運動は、苫小牧の住民の素朴な疑問から始まりました、『もし、「千歳川放水路計画」が無かったら、洪水を防ぐために他の方法を考えたのではないか』と。
 そこで、「千歳川放水路計画書」を徹底的に検証してみました。また同時に、河川審議会に提出された資料を建設省から取り寄せましたが、単に流量配分が記載されているだけで、検証の素材にはならないものでした。また、計画の実施に当たって考慮されなければならない、影響(自然環境・農業・漁業・社会的変化)は、実施計画を策定するために行われる、「環境アセス」の段階まで待たなくては具体的な影響評価はされない。
 このことが、今日「千歳川放水路計画」のみならず、大規模公共工事が社会問題に発展する大きな要因になっている考えられます。
 市民的な感覚からいえば、案にすぎない計画がいつの間にか実行されしまう"謎"がここにあったわけです。
 
 さて、開発局は「新遠浅川」方式は太平洋側への被害が大幅に軽減されると説明しましたが、現在は被害がないのですから、軽減という比較は市民が納得するものではありません。
 また、検討委員会の中で、
『流域内対策を優先させその上で、洪水被害が無くならない場合に、流域外対策を対象から除外すると、その後の対策がとれない』
『「新遠浅川」方式の技術的評価がなされていない以上、余地を残しておくべきだ』
と論じられていますが。一見説得力がありそうな発言ですが、その場合、河川審議会には(先の話ですが、知事は)どう答申するのでしょうか、流量配分が決まらない以上、困難であると考えます。また、「新遠浅川」は技術的検証以前の問題として、「計画」自体が明確になっていないと認識しており、もし、現計画のスケールを縮小しただけのものであるとするのなら、苫小牧市が開発局に要請した、「現計画」の質問に全て回答しなくてはならないと考えます。
 したがって、「新遠浅川」方式を中間取りまとめに残すべきではないと思います。

以上


 1982年に、従前の石狩大橋での基本高水流量9,000‰/sが2倍の18,000‰/sに引き上げられ、その流量配分をダム2,000‰/s・遊水池1,000‰/s・本川14,000‰/s、残りを流域とは関係のない、太平洋に流出させることが決定されたことにより、一刻を争うべき洪水対策が遅れる原因となった。
 この17年間様々な放水路をめぐる動きがあったが、特筆されるべきは、洪水被災地域での促進運動は当然のことだが、放水路の完成により被害を被る太平洋側苫小牧での反対運動は、千歳川放水路に反対する市民の会(市職労の呼びかけで苫小牧地区労が労働組合ばかりでなく広範な市民団体を結集)が80,000人を超す反対署名を集めたことであり、また、同時に単に反対を唱えるばかりでなく、代替案の模索に取り組んでいたことである。
 このような動きの中で、動き始めたばかりに道連合が「千歳川放水路対策委員会」を設立、約半年の検討の結果、知事に条件を付け促進を提言した。
しかし、この条件こそ今日の状況を生み出す、高いハードルだったといえる。
 その間、村山政権が誕生したのも反対運動に大きな影響をもたらす結果になった。
 五十嵐建設大臣のもと、建設省内部で河川行政に批判的だったグループが、治水のあり方について、長良川や、多くのダムが膠着状態に陥っていることに対する反省の目が芽生えたのである。結果、河川審議会で重要なな役割りを果たしていた、高橋裕(当時東大教授)さえも、河川審議会のあり方に反省ともいえる、改革案を作成、それに沿って河川法自体の改正へと動き始めたのである。
 それに呼応して、道連合が「千歳川放水路対策委員会」を開催し、以前の条件が未だ解決の見いだせいないのなら、千歳川放水路計画の白紙撤回もあり得ると表明、また、道が主体となって、専門家による検討を提唱、その結論にゆだねるとしたが、以前の条件をくみした「流域内外」の対策から脱し切れなかった。
 自治労道本部は、さらに一歩進めて、流域外の対策はいたずらに洪水対策を引き延ばす可能性があるとして「流域内総合治水対策」を求めることを決めた。
 そのような状況下、専門家(?)による「千歳川流域治水対策検討委員会」を設置今日に至る。
 
1 これまでの検討結果と検討委員会の役割
前回(1月22日)の拡大会議に提出した意見書に述べたとおり、一年以上にわたるこれまでの検討委員会・拡大会議での検討によって明らかになったことは以下の3つである。(1)住民合意が得られた流域内での総合治水対策を優先約に推進する。
(2)住民合意が得られず、また自然環境への悪影響を除去できない放水路計画は今後、  千歳川流城の治水対策としては考えない。
(3)ミ二放水路案(新遠浅川方式)は、放水路計画の規模を縮小したものの、自然環  境への悪影響はほとんど変わらず、また、これまで技術的に不可能とされてきた流  域内での治水対策が十分に可能であることが拡大会議で初めて示されたことから、  流域外住民の合意を得ることができなかった。

 本検討委員会の役割は、自然環境への悪影響が大きいために住民合意が得られず17年間にわたる膠着状態をつくり出してきた原因を明らかにしてその弊害を取り除き、一刻も早く千歳川流域の治水対策を実施することにある。
 このような委員会の役割と使命からすれば、委員会は1年以上にわたる検討によって合意ができた総合治水対策をもとに知事への答申を出すべきである。また、これ以上の検討をしないことか含意された千歳川放水路計画、および、将来にわたって合意を得る見通しが全くないことか明らかになったミニ放水路案(新遠浅川方式)は、今後、千歳川流域の治水対策としては検討の対象としないことを明記すべきである。

2 ミ二放水路案(新遠浅川方式)について
 ミニ放水路案(新遠浅川方式)は、上述したように基本的に放水路計画と変わらない流城外対策であり、これまで放水路計画に反対してきた漁業者・流域外住民・自然保護団体などの合意を全く得ることができなかった。したがってこれを認めれば、再び16年間にわたる膠着状態に逆戻りすることは明らかである。
 この案が拡大会議の最終段階で出されたため、なお検討が不十分とする意見もあるが、千歳川流域の治水対策が進まなかった根本的な要因は、本来、流域内て処理すべき治水対策を流域外におしつけることへの住民合意が得られなかったことによるのであり、ミニ放水路案自体も、前回の意見書でも述べたように、すでに17年間にわたる検討を経ていると言える。
(1)掘削深度が放水路計画とほとんど変わらないため、美々川の地下水保全がきわめ  て困難であることは放水路計画と同じである。
(2)洪水ピーク時の流量を減らし、また安平川下流部に遊水池をもうけて太平洋への  濁水の流出を減らすとしているが、漁業者か問題としているシルト分などの細粒物  質の大量流出が防ぎ得ないことは明らかである。
また、
(3)放水路計画をめぐる過去17年聞の議論においては、
 1:代替案として提案された背割り堤の建設が技術的に困難であり、それ以外の合流  点対策もない。
 2:千歳川の堤防は地盤の悪さからこれ以上の強化は不可能で、計画水位を7,5m以  上にすることは不可能。
 3:「遊水池」は「将来にわたって土地利用を著しく制約する」ため住民の合意を得ら  れずその造成も不可能。
とされ、それ故に、千歳川流域の治水対策には、流域外対策が不可欠と16年閥、主張されてきた。
 しかし、1年以上にわたる検討の結果、以下の事実か明らかになった。
 1:背割り堤の建設は技術的に困難であっても、その困難さを克服するべき技術的検  討はこれまで十分な予算と時間をかけて行われたわけではないこと。また、合流点  対策には、背割り堤以外にも技術的問題なしに可能な対策が実際にはいくつもあっ  たこと。
 2:堤防の強化は十分に可能であり、それによって千歳川の計画水位はいっきよに
8,5mにまで高められたこと。また、技術的にはさらに高められること。
3:常時、水につかる「遊水池」ではなく、ふだんは営農やリゾートとしての土地利  用が可能な「遊水地」とし、治水対策の予算で農地の買収・借り上げを行えば、流  域住民の合意は得られること。
これらの事実は、17年間、開発局が一貫して主張してきた1~3のことがらの根本的な見直しを迫るものであり、また別な見地からすれば、そのような可能性か十分に予見できたにもかかわらず、それを検討・公表してこなかったことは、一種の背信行為であるとさえ言える。
 検討委員会・拡大会議による検討によって、「流域外対策によってしか千歳川流域の治水は不可能である」とする開発局のこれまでの主張は根本的な修正を求められており、「流域内対策だけで千歳川流域の治水か可能である」と確認されたことは、中間答申のなかで最も強調すべきことがらである。
 これらの事実をふまえるならば、十分に可能であることが明らかにされた1~3の流城内対策を徹底することなく、流域外対策に頼ろうとするミニ放水路案(新遠浅川方式)が今後とも住民合意を得られることはもはやあり得ない。したがってその検討か不十分であるという危恨は杞憂である。

3合流点対策について
 当面の総合治水対策には含めないとしても、総合治水対策では千歳川流域の治水効果が不十分であるので、将来、検討すべき治水対策としてはミニ放水路案(新遠浅川方式)を残すべきだという主張も一部ではなされている。
 しかし、上述したように、これまで16年間にわたる膠着状態をつくり出し、治水事業の大きな妨げになってきた流域外対策を残すことは、流域内で可能な治水対策の進捗を遅らせる結果をもたらすとしか考えられない。
 上述した1~3の流域内対策を実施すれば、たとえ石狩川の基本高水流量を18,000‰/sとしても治水は可能であることは、検討委員会・拡大会議,北海道開発局のすべてが認めたことがらであり、これまでの16年間にわたる経緯に加えて、このような新たな事実の判明からすれば、将来にわたって住民合意が得られる見通しのない流域外対策案を残すことは、実施可能な流域内での治水対策をいたずらに遅延させる結果しかもたらさないことは明らかである。
 また、合流点対策として提案されているいくつかの方式は大規模な工事を必要とし、住民合意を得るうえで困難か予測されることから、合流点対策が不可能となったときのためにミニ放水路案(新遠浅川方式)を残すべきだとの意見も出されている。しかし、流域外に洪水を出したうえ自然環境を大きく損ない、しかも合流点対策を上回る大規模工事を実施しようとするミニ放水路案(新遠浅川方式)は上述したように現時点ですでに将来にわたって住民含意が得られる可能性が全くないことが明らかになった案である。したがって、それより工事規模も小さくでき、しかも流城内で洪水を処理できる合流点対策が不可能になるという考えは矛盾している。
 合流点対策を実施するにあたっては、委員会での検討の前提である石狩川での安全度
1/150を確保できる対策でなければならない。
 この安全度をとったとき、想定される石狩川の流量ならびに総合治水対策実施後の
20年後の合流点の水位は別表のとおりである。千歳川の計画水位を8,5m~8,7mとすれば、合流点水位がこれより低ければ千歳川の水を安全に流すことができ、合流点での大規模な工事は不要となる。
 逆に、合流点水位がこれより高くなるような流量を想定すれば、それだけ工事は大規模になる。しかし、どのような流量を想定しても、すべて安全度1/150は確保される。
 このような条件のもとで、住民合意の困難度を比較してみると、当然、工事の規模が大きくなるほど合意は困難となる。しかし別表に示したように、同じ安全度をとっても想定流量を小さくすれば住民合意は容易になり、またさらに、総合治水対策でもうたわれているような石狩川中流部での遊水地や、中上流部の支川での流出抑制、下流部での低水路拡幅、高水敷の切り下げ、さらにこれまで提案されてきたさまざまな方法を組み合わせることにより、合流点での工事規模は縮小でき、それだけ住民合意は得やすくなる。
 このように、合流点対策は流域住民により「同じ安全度のもとでどこまでの流量を想定するか」を選択することにより、また工事を合流点に集中させ特定の自治体の負担をふやさないよう、さまざまな工夫によって工事地点を分散させることにより、治水事業に対する流域内自治体の果たす負担をできるだけ平均化して、住民合意を得やすくざせることが十分に可能な対策である。
 したがって現時点では、合流点対策を一つの方式に特定すべきではなく、合流点の水位にかかわる石狩川流域全体の自治体の検討のもとに、住民合意がもっとも得やすい方式を5~10年をかけて策定すべきである。

4 河川審議会への対応ならびに道の役割
 本来、この委員会は、河川審議会で策定された千歳川放水路計画が16年間にわたって膠着状態をつくりだし、一刻を争う治水事業が進まないために、事業主体である北海道開発局の依頼で、北海道知事により設置されたものである。その委員会、ならびに委員会によってつくられた拡大会議での検討により、千歳川放水路計画は今後、千歳川流域の治水対策案としては検討しないとの合意がなされたことは、本委員会が、河川審議会に対して、地元白治体の立場からその決定事項を変更する意思表明をしたことに他ならない。
 すでに建設省は、細河内ダムや吉野川河口堰など、計画決定後、長期にわたって地元住民の反対により着工できなかったダムや河口堰計画についてダム審議会などの機関を設けてその見直しを検討している。細河内ダムは地元、木頭村の長年にわたる反対により中止され、また吉野川河口堰については、ダム審議会ではゴーサインを出したものの、10万人を越える反対署名が集まるなど地元住民の反対が強いことから、地元徳島市議会では、反対案を否決したにもかかわらず着工を見合わせ、さらに住民の合意を得るための検討を続けることが最近になって決定された(別紙資料参照)。
 すなわち、住民による意志決定をうたった新河川法のもとでは、住民参加なしに治水計画を策定してきたこれまでの河川審議会のやり方自体がすでに整合性を失い、新河川法の精神に対応した新たな計画決定のためのプロセスがいま求められているといえる。
 一刻を争う千歳川流域の治水事業では、全体計画が決まるまで治水対策を待つことはできない。したがって住民合意ができた治水計画から順次、実行せざるを得ず、したがって道は河川審議会に対し、河川審議会が本検討委員会の答申を受けて、まず千歳川流域のみの部分改訂を行い、早急に総合治水対策を実施するよう答申すべきである。
 また石狩川全体の基本計画については、上述したように、同じ安全度のもとで石狩川の想定流量(基本高水流量)をどう選択するかを流域住民が検討し、それに応じでどのような合流点対策を選択するかを決定したのちに5~10年のうちに策定されるべきである。 含流点対策を速やかに実施するためには、治水事業に対する流域内各自治体の負担をできるだけ平均化して、一自治体の負担が大きくなりすぎないような工夫が不可欠である。合流点対策の根幹となる合流点水位の決定には、石狩川の全流域の白治体がかかわるため、住民合意をできるだけ速やかに得るためには、道が中心となって流域内各自治体の利害を調整する検討委員会の設置が必要であり、本検討委員会は、知事にたいし、このような石狩川流域治水検討委員会の速やかな設置と、それにたいして道が主導的立場で住民合意を得る努力を払うよう答申すべきである。
 またこの問題を契機として、河川基本計画の策定にあたっては、想定流量(基本高水流量)の見直しを含め、住民参加による意志決定手続きが今後、早急に進められなければならない。
 委員会はこのことを知事が開発局・建設省に提言するよう答申すべきである。


以上の意見書は「千歳川放水路に反対する市民の会」代表・大西陽一氏のご厚意により提供されたもので原文のまま掲載しました。

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このページは、1999年3月10日 16:28に書かれた記事です。

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