千歳川流域地治水対策検討委員会への意見書 2

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utonaiko_02.jpg千歳川流域地治水対策検討委員会への意見書

この意見書は1999年3月9日付で「(財)日本野鳥の会保護・調査センター」名で千歳川流域地治水対策検討委員会に提出された意見書です。「千歳川放水路に反対する市民の会」代表・大西陽一氏のご厚意により提供されたもので原文のまま掲載しました。(加藤)


1999年3月9日

千歳川流域治水対策検討委員会
委員長 山田 家正 様

(財)日本野鳥の会 保護・調査センター
所長 品田 穣

中間報告に関する意見書

 委員長におかれましては、ご多忙ななか1年以上に渡って、様々な立場からの異なる意見の取りまとめにご尽力いただき、自然保護の立場からこの問題に取り組んできましたものといたしまして、深く感謝いたしております。
 さて、先の拡大会議にて提示されました中間報告(骨子)に関して、その方向性につきまして意見と要望を述べたいと思います。

1)対立の構図と新遠浅川案の取り扱いについて
拡大会議でも続く対立
 放水路問題をめぐる対立は、北海道開発局と住民、それに千歳川流域住民と放水路予定地の住民の対立で全く不毛な16年間といえます。これにつぎ込まれ消えていった国費も200億円を超えています。
 こうした対立を解消し、正常な状態に戻すことが検討委員会の使命だと考えます。しかしながら、16回に及ぶ拡大会議での議論を振り返って見ますと、流域内対策を求める立場と流域内対策の困難性を訴えるという二つの立場の対立の構図を引きずっていることが明らかです。そしてそれは最終局面とも言える現時点でも、新遠浅川方式を巡る議論としてマスコミを賑わしています。もし、新遠浅川方式が今後新たに作られる合流点対策の検討の場に持ち越された場合、現在の対立そのものを持ち越すことは明らかです。

新遠浅川を巡る対立
 現在、千歳川流域から報道等により聞こえてくる声は、「総合治水対策よりも新遠浅川が優れている。」(12/4 黒氏市長定例記者会見)、「治水対策は流域内だけでは駄目。流域外対策が必要だ。」(1/20 吉田氏千歳川放水路事業促進連合期成会役員会後の記者会見)とすでに、流域外対策を求める声です。
 一方、自然保護団体や漁業者、ルート上の自治体からは、放水路計画同様の反対があり、さらに検討委員会の検討の結果、流域内処理で洪水対策が可能なことが明らかになったことから、流域外処理に反対してきた人々の合意を得ることは今まで以上に困難です。洪水に苦しむ住民感情を考えるとという意見もありますが、放水路を造れば今度は太平洋の漁民も洪水の被害者になってしまうのです。

対立解消のためにも流域外対策の削除を
 もし、検討委員会が、新遠浅川方式にはっきりとした結論を出さずに次の委員会に先送りされれば、合流点対策を巡る今後の議論の中でも、対立は解消されず、膠着状態に陥るでしょう。中間報告から流域外対策を除外し、長年の対立を解消することこそ委員会の使命と考えます。
 千歳川における当面の対策の実施のための、石狩川工事基本計画の部分改定も千歳川の流量を石狩川に入れるかどうかが決まらなければ立てようが無いと思われます。
 検討委員会の結論からは、新遠浅川方式を含む流域外対策を併記されないように要望いたします。

2)自然環境の保全のためにも流域外対策の削除を
 新遠浅川方式では、千歳川流域の農業者と太平洋の漁業者という対立がクローズアップされていますが、自然保護に携わり、現地にサンクチュアリを設置している立場からみまして、新遠浅川方式は放水路とほとんど同じ掘削深度で地下水系を分断し、美々川,ウトナイ湖への影響は回避できません。ウトナイ湖,美々川は道央圏に残された唯一の景観や生物の多様性に富んだ湿地生態系であり、水鳥の重要渡来地としての重要性は言うまでもありません。サイホン方式による保水対策が検討されておりますが、悪影響の低減,代償よりも回避が優先することは新アセス法でもうたわれております。総合治水対策で流域内での治水が可能なことが明らかになった以上、流域外対策は回避すべきです。
 検討委員会の場でも自然環境の破壊は金銭的に計れないとの指摘が行われております。自然環境の保全が地球規模で共通の認識であるという拡大会議設置時の総合的な治水対策推進の立場に基づきご検討願います。

3)石狩川流域の視点での合流点対策と基本高水の見直しを含めた提言を
 現在提起されている合流点対策は、従来からの開発局の発想そのままの大規模な工事です。このままの案で合意を得ることはそれなりに困難を伴うと考えます。その時に、流域外に解決を求めるのではなく、石狩川全体の問題として考えなければならないと考えます。その議論は各地点での計画高水流量や流量配分の見直しであり、ひいては基本高水の見直しにも踏み込まざるを得ません。しかしながら、基本高水の見直しを含めた議論は、従来からの建設省の考え方を踏襲せざるを得ない開発局の立場からは、行い得ないものでしょう。
 それを可能とするものがあるとすれば、検討委員会からの提言しかありません。中間報告案では合流点対策の検討に関して、「必ずしもこれらに限定することなく最良の対策案の検討を要望する。」とありますが、当初の議論の方向性にもあった千歳川流域の治水対策を石狩川との関係において総合的に検討するという立場を明確にし、石狩川流域という立場からの対策の検討と、基本高水の再検討も視野に入れた柔軟な検討を求める提言になることを希望いたします。

4)安全度1/20に関して
素朴な疑問
 千歳川流域の治水安全度を 1/20とされており、その算出過程で、対応する石狩川流域の雨量を出されております。
 では、そのモデルで千歳川流域の治水安全度 1/100とされる雨量320mmが降ったときに、石狩川流域で想定される雨量はどのような量になるのでしょうか。
 委員会から示された資料から読み取りますと約300mm程度の雨量となりますが、これと石狩川流域150年に一度の260mmの雨量設定との関連はどう考えられるのでしょうか。
 
安全度という数字にこだわらず住民に納得できる説明を
 開発局が平成6年に作成した石狩川中期整備試案の基本方針に以下のようなことがかかれています。
 「人口の高齢化が進み、国全体の投資余力が減じて行くと想定されている21世紀初頭(概ね2015年)までにナショナル・ミニマムである概ね30~40年に一度起こる可能性のある洪水が発生しても安全に流れる川の大きさを確保することを目標とします。」
 つまり、どんなに大きな目標を立てても、完成できないのが現在の治水計画の現状です。1/150 が目標の豊平川でさえ、まだ 1/40 を目指しているのです。1/20が小さな値なのか、1/40が高い値なのか議論の分かれるところですが、現状として 1/20が低い値と取られ、流域外対策を求める一因になっています。
 安全度は、河川の技術者が目安にしている数字ですが、一般の人にはやはりイメージできないのではないでしょうか。20年に一度の洪水の被害はどの程度の規模なのか。現在の千歳川の堤防は計画水位を8.5mにしても2mの余裕高を85%の区間で満たしています。しかも、検討委員会の総合治水の中に樹林帯が組み入れられたことから、洪水で越流するという最悪のケースでも、破堤は防ぐということが目標に入ったと言えます。
 総合治水対策が、流域住民の安心できる対策であることを、委員会が積極的に示されることを望みます。

今後の経済状況のなかで取り残される千歳川治水
 試案の中でも述べられているように、今後の公共事業を取り巻く経済環境は、ますます厳しくなっていくと思われます。治水事業であっても、今後の予算は厳しくなり、千歳川流域の当面の対策でも着手が遅れれば遅れるほど経済状況は厳しくなると考えます。石狩川水系でも、先日夕張シューパロダムの着工が財政構造改革で10年延期されることが報道されました。こうした状況の中で、千歳川流域の治水が再び膠着状態に陥り、着手が遅れる事態はもっとも避けなければならない事態です。即実行可能で実効性のある部分から積極的に行って行くべきだと考えます。また、数千億と言った大規模な工事ではなく、中小の対策を検討していく時代だと考えます。このようなスタンスでの貴委員会の取りまとめを期待しております。

5)遊水地における補償の明記
 千歳川流域で外水用に18km2の遊水地を確保し、さらに内水対策として調整地を確保することは、そこに居住し、営農されている方の理解無くしては実現できません。中間報告では、社会制度の整備充実として洪水に対する補償制度の確立が求められておりますが、遊水地・調整地の確保にあたっての補償やそこで営農を続ける場合、堪水による農業被害についての補償についても提言に盛り込まれることが、当面の治水対策のスムーズな実現に一歩近づけると考えます。

 これまでの、検討委員会,拡大会議の議論の中には、千歳川流域の治水に限らず、これからの道内の河川行政の基本的なスタンスを問い直すような議論も行われてきていると思います。これはひとえに委員各位の見識のなせるところと考えます。現状では、流域内外の対立の中に埋没しがちですが、将来を見透かした委員会の見識を、是非提言書のバックボーンとして盛り込んでいただきたいと願います。


以上の意見書は「千歳川放水路に反対する市民の会」代表・大西陽一氏のご厚意により提供されたもので原文のまま掲載しました。

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このページは、1999年3月 9日 16:25に書かれた記事です。

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