千歳川流域地治水対策検討委員会への意見書 1

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utonaiko_01.jpg千歳川流域地治水対策検討委員会への意見書

この意見書は1999年2月18日付で「とりかえそう北海道の川実行委員会」「千歳川放水路に反対する市民の会」「市民ネットワーク北海道」「(社)北海道自然保護協会」「(財)日本野鳥の会保護・調査センター」名で千歳川流域地治水対策検討委員会に提出された連名意見書です。「千歳川放水路に反対する市民の会」代表・大西陽一氏のご厚意により提供されたもので原文のまま掲載しました。


1999年2月18日


千歳川流域治水対策検討委員会
委員長 山田家正 殿

とりかえそう北海道の川実行委員会
代表 小野 有五
千歳川放水路に反対する市民の会
  代表 大西 陽一
市民ネットワーク北海道
代表 中島 和子
(社)北海道自然保護協会
 会長 俵 浩三
(財)日本野鳥の会保護・調査センター
   所長 品田 穣

意見書


 2月6日の検討委員会では、ミニ放水路計画(新遠浅川方式)をめぐって委員のあいだに議論があり、中間答申に向けての結論が出されませんでした。委員長私案ならびに、それに対する各委員のご見解に対して私どもの意見を述べさせていただき、住民合意と千歳川流域での速やかな治水対策の実施に向けて委員会の皆様のご検討をお願いしたいと存じます。


1.これまでの検討結果と検討委員会の役割
 前回(1月22日)の拡大会議に提出した意見書に述べたとおり、一年以上にわたるこれまでの検討委員会・拡大会議での検討によって明らかになったことは以下の3つである。

(1) 住民合意が得られた流域内での総合治水対策を優先的に推進する。
(2) 住民合意が得られず、また自然環境への悪影響を除去できない放水路計画は今後、千歳川流域の治水対策としては考えない。
(3) ミニ放水路案(新遠浅川方式)は、放水路計画の規模を縮小したものの、自然環境への悪影響はほとんど変わらず、また、これまで技術的に不可能とされてきた流域内での治水対策が十分に可能であることが拡大会議で初めて示されたことから、流域外住民の合意を得ることができなかった。

本検討委員会の役割は、自然環境への悪影響が大きいために住民合意が得られず16年間にわたる膠着状態をつくり出してきた原因を明らかにしてその弊害を取り除き、一刻も早く千歳川流域の治水対策を実施することにある。
このような委員会の役割と使命からすれば、委員会は1年以上にわたる検討によって合意ができた総合治水対策をもとに知事への答申を出すべきである。また、これ以上の検討をしないことが合意された千歳川放水路計画、および、将来にわたって合意を得る見通しが全くないことが明らかになったミニ放水路案(新遠浅川方式)は、今後、千歳川流域の治水対策としては検討の対象としないことを明記すべきである。


2.ミニ放水路案(新遠浅川方式)について
 ミニ放水路案(新遠浅川方式)は、上述したように基本的に放水路計画と変わらない流域外対策であり、これまで放水路計画に反対してきた漁業者・流域外住民・自然保護団体などの合意を全く得ることができなかった。したがってこれを認めれば、再び16年間にわたる膠着状態に逆戻りすることは明らかである。
 この案が拡大会議の最終段階で出されたため、なお検討が不十分とする意見もあるが、千歳川流域の治水対策が進まなかった根本的な要因は、本来、流域内で処理すべき治水対策を流域外に押しつけることへの住民合意が得られなかったことによるのであり、ミニ放水路案自体も、すでに16年間にわたる検討を経ていると言える。前回の意見書でも述べたように、

(1)  掘削深度が放水路計画とほとんど変わらないため、美々川の地下水保全がきわめて困難であることは放水路計画と同じであり、
(2) 洪水ピーク時の流量を減らし、また安平川下流部に遊水池を設けて太平洋への濁水の流出を減らすとしているが、漁業者が問題としているシルト分などの細粒物質の大量流出が防ぎ得ないことは明らかである。
また、
(3) 放水路計画をめぐる過去16年間の議論においては、
 1:代替案として提案された背割り堤の建設が技術的に困難であり、それ以外の合流点対策もない。
 2:千歳川の堤防は地盤の悪さからこれ以上の強化は不可能で、計画水位を7、5m以上にすることは不可能。
 3:「遊水池」は 「将来にわたって土地利用を著しく制約する」ため住民の合意を得られずその造成も不可能。
とされ、それ故に、千歳川流域の治水対策には、流域外対策が不可欠と16年間、主張されてきた。

 しかし、1年以上にわたる検討の結果、以下の事実が明らかになった。
 1: 背割り堤の建設は技術的に困難であっても、その困難さを克服するべき技術的検討はこれまで十分な予算と時間をかけて行われたわけではないこと。
また、合流点対策には、背割り堤以外にも技術的問題なしに可能な対策が実際にはいくつもあったこと。
 2: 堤防の強化は十分に可能であり、それによって千歳川の計画水位はいっきょに8、5mにまで高められたこと。また、技術的にはさらに高められること。
 3: 常時、水につかる「遊水池」ではなく、ふだんは営農やリゾートとしての土地利用が可能な「遊水地」とし、治水対策の予算で農地の買収・借り上げを行えば、流域住民の合意は得られること。

 これらの事実は、16年間、開発局が一貫して主張してきた(3)の1~3の前提条件の根本的な見直しを迫るものである。本来、このような柔軟な条件の下で計画立案がなされていれば、これまで16年間の治水事業の膠着状態は起こらなかったかもしれない。
 検討委員会・拡大会議による検討によって、「流域外対策によってしか千歳川流域の治水は不可能である」とする開発局のこれまでの主張は根本的な修正を求められており、「流域内対策だけで千歳川流域の治水が可能である」と確認されたことは、中間答申のなかで最も強調すべきことがらである。
これらの事実をふまえるならば、十分に可能であることが明らかにされた1~3の流域内対策を徹底することなく、流域外対策に頼ろうとするミニ放水路案(新遠浅川方式)が今後とも住民合意を得られることはもはやあり得ない。したがってその検討が不十分であるという危惧は不要である。

3.合流点対策について
当面の総合治水対策には含めないとしても、総合治水対策では千歳川流域の治水効果が不十分であるので、将来、検討すべき治水対策としてはミニ放水路案(新遠浅川方式)を残すべきだという主張も一部ではなされている。
 しかし、上述したように、これまで16年間にわたる膠着状態をつくり出し、治水事業の大きな妨げになってきた流域外対策を残すことは、流域内で可能な治水対策の進捗を遅らせる結果をもたらすとしか考えられない。
 上述した1~3の流域内対策を実施すれば、たとえ石狩川の基本高水流量を18,000m3/sとしても治水は可能であることは、検討委員会・拡大会議・北海道開発局のすべてが認めたことがらであり、これまでの16年間にわたる経緯に加えて、このような新たな事実の判明からすれば、将来にわたって住民合意が得られる見通しのない流域外対策案を残すことは、実施可能な流域内での治水対策をいたづらに遅延させる結果しかもたらさないことは明らかである。
また、合流点対策として提案されているいくつかの方式は大規模な工事を必要とし、住民合意を得るうえで困難が予測されることから、合流点対策が不可能となったときのためにミニ放水路案(新遠浅川方式)を残すべきだとの意見も出されている。しかし、流域外に洪水を出したうえ自然環境を大きく損ない、しかも合流点対策を上回る大規模工事を実施しようとするミニ放水路案(新遠浅川方式)は上述してように現時点ですでに将来にわたって住民合意が得られる可能性が全くないことが明らかになった案である。したがって、それより工事規模も小さくでき、しかも流域内で洪水を処理できる合流点対策が不可能になるという考えは矛盾している。
 合流点対策を実施するにあたっては、委員会での検討の前提である石狩川での安全度1/150 を確保できる対策でなければならない。
この安全度をとったとき、想定される石狩川の流量ならびに総合治水対策実施20年後の合流点の水位は別表のとおりである。千歳川の計画水位を8、5m~8、7mとすれば、合流点水位がこれより低ければ千歳川の水を安全に流すことができ、合流点での大規模な工事は不要となる。逆に、合流点水位がこれより高くなるような流量を想定すれば、それだけ工事は大規模になる。しかし、どのような流量を想定しても、すべて安全度1/150 は確保される。
このような条件のもとで、住民合意の困難度を比較してみると、当然、工事の規模が大きくなるほど合意は困難となる。しかし別表に示したように、同じ安全度をとっても想定流量を小さくすれば住民合意は容易になり、またさらに、総合治水対策でもうたわれているような石狩川中流部での遊水地や、中上流部の支川での流出抑制、下流部での低水路拡幅、高水敷の切り下げ、さらにこれまで提案されてきたさまざまな方法を組み合わせることにより、合流点での工事規模は縮小でき、それだけ住民合意は得やすくなる。
このように、合流点対策は流域住民が「同じ安全度のもとでどこまでの流量を想定するか」を選択することにより、また工事を合流点に集中させ特定の自治体の負担をふやさないよう、さまざまな工夫によって工事地点を分散させることにより、治水事業に対する流域内自治体の果たす負担をできるだけ平均化して、住民合意を得やすくさせることが十分に可能な対策である。
したがって現時点では、合流点対策を一つの方式に特定すべきではなく、合流点の水位にかかわる石狩川流域全体の自治体の検討のもとに、住民合意がもっとも得やすい方式を5~10年をかけて策定すべきである。

4.河川審議会への対応ならびに道の役割
 本来、この委員会は、河川審議会で策定された千歳川放水路計画が16年間にわたって膠着状態をつくりだし、一刻を争う治水事業が進まないために、事業主体である北海道開発局の依頼で、北海道知事により設置されたものである。その委員会、ならびに委員会によってつくられた拡大会議での検討により、千歳川放水路計画は今後、千歳川流域の治水対策案としては検討しないとの合意がなされたことは、本委員会が、河川審議会に対して、地元自治体の立場からその決定事項を変更する意思表明をしたことに他ならない。
 すでに建設省は、細河内ダムや吉野川可動堰など、計画決定後、長期にわたって地元住民の反対により着工できなかったダムや可動堰計画についてダム審議会などの機関を設けてその見直しを検討している。細河内ダムは地元、木頭村の長年にわたる反対により中止され、また吉野川可動堰については、ダム審議会ではゴーサインを出したものの、可否についての住民投票を求める署名が10万人(必要署名数の22倍)を越えるなど地元住民の反対が強いことから、地元徳島市議会では住民投票条例の制定を否決したにもかかわらず、建設省では着工を見合わせ、さらに住民の合意を得るための検討を続けることが最近になって決定された(別紙資料参照)。
 すなわち、住民による意思決定をうたった新河川法のもとでは、住民参加なしに治水計画を策定してきたこれまでの河川審議会のやり方自体がすでに整合性を失い、新河川法の精神に対応した新たな計画決定のためのプロセスがいま求められているといえる。
一刻を争う千歳川流域の治水事業では、全体計画が決まるまで治水対策を待つことはできない。したがって住民合意ができた治水計画から順次、実行せざるを得ず、したがって道は河川審議会に対し、河川審議会が本検討委員会の答申を受けてまず千歳川流域のみの部分改訂を行い、早急に総合治水対策を実施するよう答申すべきである。
 また石狩川全体の基本計画については、上述したように、同じ安全度のもとで石狩川の基本高水流量をどう選択するかを流域住民が検討し、それに応じてどのような合流点対策を選択するかを決定した後に5~10年のうちに策定されるべきである。合流点対策を速やかに実施するためには、治水事業に対する流域内各自治体の負担をできるだけ平均化して、一自治体の負担が大きくなりすぎないような工夫が不可欠である。合流点対策の根幹となる合流点水位の決定には、石狩川の全流域の自治体が関わるため、住民合意をできるだけ速やかに得るためには、道が中心となって流域内各自治体の利害を調整する検討委員会の設置が必要であり、本検討委員会は、知事に対し、このような石狩川流域治水検討委員会の速やかな設置と、それに関して道が主導的立場で住民合意を得る努力を払うよう答申すべきである。
 またこの問題を契機として、河川整備基本方針の策定にあたっては、基本高水流量の見直しを含め、住民参加による意思決定手続きが今後、早急に進められなければならない。委員会はこのことを知事が開発局・建設省に提言するよう答申すべきである。


添付資料:
  別表 比較表
  吉野川可動堰計画を伝える朝日新聞の記事


以上の意見書は「千歳川放水路に反対する市民の会」代表・大西陽一氏のご厚意により提供されたもので原文のまま掲載しました。

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